そこは、窓の方に向け、造り付けの椅子がいくつか据え置かれた狭い部屋だった。壁面は、奇妙な機械や、もとは何かの表示装置だったらしい滑らかな板に覆われていた。
「……私は恐らく…そのことに…気付い…ざ…た……」
人の気配はない。
「それなのに…ざ…ざざ…私は…ざ………ざ…ざ………」
だが一方の壁面の中央にある機械の表示灯だけは、かすかな光を放っていた。声はそこから聞こえてくるのだ。
急いで壁面のそばに駆け寄って叫んだ。
「聞こえているぞ！おおい！返事をしてくれ！！」
だがそれが相手に通じたのかどうかは分からない。表示灯の光が少しずつ弱くなって行くのと同時に、相手の声も少しずつ小さくなっていったのだ。
「……ざ…心からすまない…と…ざ……どう…か……ざざ…ざ………」
声はもう砂のこぼれるような音にまざってしまっていた。
「…ざざ…ざ………ざ……ざ…………………………………」
その音も、表示灯の光と共に静かに小さくなってゆき、消えた。