建造物は、もう目の前にあった。必死の思いで入り口を探す。ハッチ状の物を見付け、躊躇なく蹴破った。突風に突き落とされるようにして中に飛び降り、ハッチを押し上げた。

中は静かだった。外の『嵐』の音も響いてはこない。
闇の中、手探りで荷物の中からライト――前の遺跡群での唯一の収穫だ――を取り出し、着ている物を少し弛めた。
ゆっくりと溜息をついて、腰を下ろした。
こんな静かな空気を感じるのは何年ぶりだろうか…。ぼんやりとそんなことを考えていた…。


……………………………
…………………………………………それはよく見慣れた光景だった。造られた目的も忘れ去られ、住む者もなく荒れ果てた無人の建造物の遺跡。たまに人影を見ることがあったとしても、それは遠い昔に息絶え干涸びたまま長い時を過ごしてきた、ただの死骸に過ぎないのだった。吹き付ける風がゆっくりとそれらすべてを崩してゆく。
「…ざ………ざ…ざざ……ざ……」
その音は静かに、だが絶えまなく響いていた。
「……ざ…ざ…ざざざ……ざ……ざ……」
絶えまなく響きながら、音は少しずつ手を、足を、体中を崩していく。
「……ざざ……ざざ…ざ…ざ…ざざざ…ざ……」
ついに全身が……崩れ去り……

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