主要登場人物 ミラン・アンダーソン：サイボーグ。♀。 　　　　　　　　　　　外見は若いが42，3歳くらいだと思われる。 　　　　　　　　　　　防御力より敏捷性に優れる。戦闘力はなかなか。 ディーン・フライト：生身。♀。 　　　　　　　　　　12歳 　　　　　　　　　　色々必殺技が使えるらしい。 スティーブ・ラグフォード：生身。♂。 　　　　　　　49歳 　　　　　　　サイボーグ製造会社勤務。 　　　　　　　色々アレな政治活動に首を突っ込んでいるらしい。 　　　　　　　今回出てこないが、酒癖はあまりよくないらしい。 ＊　　＊　　＊ てってっと走ってくディーン 排水路への入り口を銃を持ってる男が何人か、警備している。 ちょっといぶかしげに見て走っていくディーン。 排水路の闇。 タイトル「第三排水路の幽霊」 　＊　＊　＊ ミランのすみか。 ディ：ただいま。 　　買ってきたよ。 　　人工筋肉の補填剤。 　　 ミ：お、サンキュ。 ディ：第三排水路のとこ、 　　　何かあったのかな？ ミ：んー？ 　　警備でも立ってた？ ディ：うん。 　　　って、何で知ってんの？ ミ：第三排水路の改良工事の下見に入った 　　技師さんたちが惨殺されちゃったんだってさ。 ディ：いつ？ ミ：昨日。 ディ：えー？ 　　　そんなん報道で 　　　やってなかったよ。 　　　誰に聞いたの？ ミ：（無視して）あああっ。 　　こっちを買ってきちゃったかぁ…。 ディ：へ？ 　　　だっていつも 　　　そっちじゃないの？ ミ：これちょっと吸収速度の 　　関係で応急修理には…。 ミ：いや、ごめん。 　　ちゃんと頼まなかった私が悪いな。 ミ：ま、こっちでも 　　使えんことは無いし。 　　（補填剤をポケットに入れる。） ディ：どっか出かけるの？ ミ：ラグフォードさんているじゃん。 　　ディーンの飲み友達の。 ディ:（ちょっとむくれる） 　　　飲み友達じゃないって。 ミ：はっはっは。 　　こないだワイン 　　おごってもらってたじゃん。 ディ：あの人に頼まれたの？ 　　　ボディーガードか何か？ ミ：いやもうちょっと不毛な仕事。 ディ：不毛な仕事って何？ ミ：…。 ディ：何？ ミ：…。 ミ：…第三排水路のあたりに 　　昔サイボーグ開発メーカーがあってさ。 　　夢見がちな会社だったらしくてね。 　　軍の制式採用とるんだとか何とか。 　　クローンとか使って派手に 　　開発実験なんかもやってたらしくてね。 　　 　　それで戦後すぐに夜逃げ同然に潰れたんだけど、 　　残ってた実験体の引き取り手を 　　一応は探したらしいんだけど、 　　見つからなかったらしくてね。 　　どうも燃やしちゃったらしいんだな。 　　 ディ：…。 ミ：ただ、そのときたまたま輸送箱に入ってたか何かで 　　燃やされなかった奴がいたらしくて、 　　それがどうも昨日の技師大量惨殺事件の犯人らしいんだ。 　　経年劣化か何かで、箱が壊れたんだろうね。 ディ：…ずっとそこに 　　　箱に入れられたまま 　　　放置されてたってこと？ 　　　 ミ：おそらくね。 ディ：…。 ミ：ラグフォードさん達の政敵が、 　　昔その会社にいたらしいんだ。 　　何とかそのサイボーグの 　　データ記録ユニットにアクセスして 　　証拠となる、その頃の視聴覚データが 　　取得できないかってさ。 ディ：データ記録ユニット？ ミ：実験記録用の 　　大容量の奴を、 　　多分体内に積んでた 　　んじゃないかってさ。 ミ：ただ、実験体本人の脳から、 　　自由にアクセスできるタイプの 　　奴とは思えないから、 　　データの殆どは 　　視聴覚データじゃなくて、 　　検証用の動作データじゃ 　　ないかっていう気がするけどね…。 ディ：…。 　　　本人の同意無しに 　　　視聴覚データを取るって 　　　犯罪じゃないの？ ミ：そうだね。 ディ：もし、取れたにしても、本人の同意がなきゃ、 　　　それがそのサイボーグのデータだって証明は 　　　できないんじゃないの？ ミ：そういう気もするんだけどね。 ディ：…それで「不毛な仕事」か。 ミ：そ。 　　 ＊　　＊　　＊ 旧市街の廃墟。 今は使われていない通路への入り口。 きしんだ音を立てるハッチを空けるA。 Ａ：…。こいつだな。 ミ：ありゃ、 　　思ったより暗いなぁ…。 　　ライト無しでも見える？ ディ：うん。 　　　このくらいなら平気。 Ａ：その子は？ ミ：私の助手です。 ディ：助手って…。^^; ミ：（黙ってぱかっと叩く） ディ：（むっ。としてミランを見る） Ａ：…。 （ラグフォードがやってくる） ラ：作業路の入り口は 　　見つかったか？ Ａ：ラグフォードさん。 Ａ：はい、ちょうど今 　　見つかったところです。 ラ：そうか。 　　本当に助かったよ。 　　ありがとう。 Ａ：いえ。 ラグフォード：（ディーンに） 　　　　　　　君も来てたのか。 （うなずくディーン） ラグフォード：二人ともすまない。 ミ：あとでこいつに 　　何かおごって 　　やってください。 ラグフォード：（ぎこちなく笑う） 　　　　　　　　了解した。 　　　　　　　　奮発するよ。 　 ＊　　＊　　＊ 　　　 ディ：…。 　　　この通路、 　　　本当に第三排水路に 　　　つながってるの？ ミ：出かける前に 　　地図見たでしょーが。 　　あと５km。 ディ：…。 　　　警備の人たち 　　　けっこうザルっぽかったから 　　　もうちょっと近くでも 　　　無人の通風孔とか 　　　探せばあったんじゃ…。 ミ：愚痴っぽいぞこら。 ディ：…。 　　　いやな予感がする。 ミ：？ ディ：…。 ミ：…！ 　　(OFF)始めちまってる！ (走り出す二人) ＊　　　＊　　　＊ （血だまりの中で折り重なって倒れている武装官達の死体） ミ：…。 （ミラン回想： ラグフォード：元々実験体だからね。 　　　　　　　そんなに長期間の単独連続稼動は想定してない。 　　　　　　　箱から出たら、多分3日も持たないだろう。 　　　　　　　その情報は市の方にも行っているから、 　　　　　　　行政側の連中は、現場の周辺を封鎖して 　　　　　　　動力切れを待ってから作戦行動に 　　　　　　　うつるはずだ。 ） ミ：あの楽観主義者〜！ ディ：愚痴っぽいぞ。 ミ：……。 ミ：動作音は 　　けっこう大きいな…。 　　ディーンにも聞こえてる？ ディ：うん。 　　 ミ：よし。 　　何とか挟撃できないか 　　やってみよう。 ディ：（うなずく） ＊　　＊　　＊ 走る二人。 ターゲットを捕捉する。 戦う3人。 ミランが捕まる。 ディ：！ 　　　（手袋を外そうとする） ミ：ダメだ！ ゆっくり崩れ落ちるターゲット。 ディ：？ ミ：実験体用の強制停止コード。 ミ：楽観主義者氏の提供だったんで 　　どうかなーと思ってたんだけどね。 　　接触状態の最大出力で 　　かろうじて効いてくれたよ。 ミ：…。 （ターゲットにコードをつなぐ。 データを取得するミラン。） ディ：！ 　　　市の人達もう来ちゃうよ！ ミ：……！！ （あわてて撤収する二人。） （突入の合図。武装官たちに 蜂の巣にされるサイボーグ。） （その音を背後に聞きながら走っていく二人） （後ろを気にするディーン） ミ：振り向くな！ （走っていく二人） ＊　　＊　　＊ ダミーターゲットをすばやく撃墜してみせるサイボーグ。 喜んで迎える開発者たち。 … そして箱の中。 ＊　　＊　　＊ 映像を見ているラグフォードとミラン、ディーン。 ミ：…全部は取って 　　来られませんでしたけどね。 ラグフォード：いや…。 　　　　　　　本当にありがとう。 　　　　　　　助かったよ。 （渋い表情の二人。 ラグフォードにもらったおみやげをかかえつつ、 どういう表情をしていいのかわからないディーン。） ＊　　＊　　＊ ミランのすみか。 報道を見ているディーン。 ディ：ミランてサイボーグ反対派なの？ ミ：いや…。 ディ：でもデータに映ってたのこの人だよね。 （「サイボーグと人間に、より明るい未来を！」 スローガンを掲げている政治家A。 あのサイボーグの開発者が少し老けた姿で映っている。） ミ：ラグフォードさんだってサイボーグ製造会社に勤めてるじゃん。 ディ：まーそーだけど。 ミ：まー、今のサイボーグ推進派ってのは 　　サイボーグ製造会社の偉いさんとか 　　それに出資してる人とかが多いからね。 　　あんまり私と利害が一致するとは言いがたいな。 ディ：？ ミ：位置情報の特定とか、視聴覚データを規格統一して、 　　本人の同意無しでも管理者側で一元管理できるようにするとか、 　　緊急停止コードを離れた場所からでも入力できるとか、 　　動作を遠隔コントロールできるとか。 　　それを私らロートルのサイボーグ達にも導入しようとかね。 ディ：…。 ミ：…私も人のことは 　　言えないけどな。 ディ：…。 （雨が降っている） END